「良好な空気環境」の重要性

住宅の高気密化の弊害

人が一生の中で最も長い時を過ごすであろう「家」。その空間の”空気の質”が、家族の健康に大きな影響を与えるであろうことは想像に難くありません。

一般的に人は1分間に約20回ほど呼吸しますので、1日に約2.8万回強もの呼吸をします。その多くが日々を過ごす家の中で行われるのだと思えば、できれば家の中の空気は、清らかな”美味しい”空気であってほしいものです。しかし、実際には、住宅における「空気の質」は、現在、危機的状況にあるのです。

1970年代頃から、年々増加傾向を続けてきた様々な”アレルギー性疾患”の多くが、近年、「住宅の空気環境」の悪化を主な原因とするのではないかと考えられています。アレルギー性疾患等の現代病の主因とされるほどに悪化してしまった現代の住宅の空気環境…なぜそれほど悪化してしまったのでしょう? 現在わかっている原因には、以下のようなものが挙げられます。

  1. 石油化学製品などから放散される有害な「揮発性有機化合物」
  2. 住宅内の「結露」・「湿気」により発生するカビや細菌
  3. 花粉・微粒子・ハウスダストetc…

確かにこのような物質や微粒子が室内に蔓延していたら、身体に良いはずはありません。それではなぜ、これらの物質が室内に蔓延してしまうのか。それにはさらに根本的な問題があるのです。それが、現代社会を蝕む真の問題…住宅の「高気密化」です。

気候風土を無視した「高気密化」

経済が拡大の一途だった1970年代の日本。大量生産/大量消費時代の始まりの頃、旺盛な住宅需要を満たすため、効率の良い組立方式の欧米式の建築技術が普及しました。それに伴って欧米式の建材も導入され、当時「木と土と紙でできている」と評された日本の伝統建築、技術は、あたかも時代遅れの劣った技術のように、軽視されてきました。

その結果、住宅市場では、欧米式の工法による住宅がもてはやされ、同時に、従来の有機的な素材に代わって、新素材や新技術で生み出された、いわゆる「新建材」という石油精製品が住宅資材の主役になりました。

厚く貼りあわせた合板を隙間なく組立てる欧米式の住宅工法の特徴の1つに気密性の高さがありました。日本の従来の工法は当時はまだ気密性が低く、冬の寒さに耐えてきた人々に、気密性の高い欧米式の住宅は好意的に受け入れられ、高く評価されてきました。

そもそも気密性の高い住宅は、冬には氷点下が続くような気温が著しく低い北欧や北米などで、その発想が生まれたものです。北半球の高緯度地域では、隙間風などもっての外。気密性の高さはその地域にとって住宅の必須の条件でした。日本でも冬の寒さの厳しい地域にも対応できる素晴らしい技術として、1970年代以降積極的に採り入れられ、北海道や東北地方など冬の寒さの厳しい地域で特に大きな効果を発揮してきました。この寒さに強い工法は、組立効率の高さも手伝って、いつしか全国規模の大手住宅メーカー等を媒介として、北日本、東日本だけでなく、比較的温暖な気候の西日本にも広く普及してきました。寒さに強く冬を快適に過ごすことのできる「高気密」住宅。その上、日本の建築技術と比べると工期が短く効率的に生産できることも、大手住宅メーカーには打ってつけ。現在まで住宅市場の主流であり続けています。

良好な空気環境のために

しかし、最近になってようやく分かって来たこと・・・つまり、気密性を高める欧米式の住宅工法は、「湿度」の低い欧米の気候には適していても、季節ごとに「湿度」が大きく変化する日本では…特に西日本の気候風土には、必ずしも適していなかった…ということです。

湿度の高い日本の夏、気密性が高く調湿作用の全くない「新建材」で覆われた欧米式の住宅では、室内にこもった湿気が行き場をなくしてしまいます。畳やカーテン、絨毯、衣類、ふとん等、室内にある「湿気を吸収しやすい素材」に取り込まれ、貯め込まれ、延いては『カビ』を発生させてしまうのです。そして、それらの『カビ』は、カビ自身が最も好む「温暖湿潤」な日本の気候風土の中でスクスク成長し、胞子をばら撒いてきたのです。

その結果が、今日の数々のアレルギー性疾患の急増と無関係であるはずがありません。近年増加傾向にあるその他の原因不明の疾患についても、住宅の空気環境の影響が疑われています。これらの問題は近年、各研究機関や薬品メーカー等の研究でも立証され、政府も対策に乗り出すまでになりました。政府・住宅業界は、住宅の高気密化によって停滞した「室内の空気」を、強制的に循環させるための「24時間換気」を義務化する等住宅の空気環境改善に目を向けたかに見えます。しかし、こうした一部の流れにも、残念ながら、日本で行われる家創りの主流は、「高気密住宅」であり続けています。住宅業界では住宅の空気環境悪化の根本原因である住宅の「高気密化」をやめるどころか、十分な換気対策を施さないまま、ますます推進している程です。鉄筋コンクリート住宅や「2×4・2×6」はもちろん、果ては「外断熱工法」という、本来極寒の地に適した工法まで登場し、高温多湿に悩んだことのないヨーロッパや北アメリカの建築技術が生産効率が高く、強度も高いという理由で過大に評価され、普及し続けています。この住宅の「高気密化」が、湿度の高い日本の夏に溢れる「湿気」を室内に停滞させ、ひいてはカビを生産し続けています。また、同時に普及した「新建材」等の石油化学製品(ウレタン塗装の合板等)から放出される有害な「揮発性有機化合物」も、高気密な環境の中で行き場を無くし、室内に停滞するなど住宅の空気環境は悪化の一途を辿ってきました。

LwSの考え方は、今日の住宅業界の方向性とは「真逆」にあると言っても良いかもしれません。LwSは、十分に信頼を置ける新たな技術は積極的に採り入れながらも、基本の部分では古来、培われてきた日本の住宅の姿に回帰すべきでなのではないか?と感じています。必要以上に気密性を高め、そのために停滞した空気を、今度は強制的に循環させる…何か不自然さを感じてしまいます。

地域柄や気候風土を考慮せず高気密住宅を量産しながら、汚れてしまった室内の空気を強制的に循環させるのではなく、最初から空気が汚れないような空間を創ることが大切なのではないでしょうか?

高い湿度を放置して、カビを発生させるのではなく、普遍的に湿度を調整できる空間を創ることに力を注ぐべきではないでしょうか?
人に有害な不要な化学物質を室内に放散させてしまう前に、人が科学の力で造り出した素材ではなく、地球に太古から存在し、人と同じように自然によって育まれた有機的な素材だけを使用して、健康的な空間創りを実現するべきではないでしょうか?

本物の素材だけで創る、自然素材に包まれた健やかな空間創り…それこそが、LwSの目指す家創りの姿です。